スリランカ旅行記(2/4) ;白い紅茶

スリランカはかつてセイロンと呼ばれていたが、こんにちセイロンといえば
紅茶のブランドとして思い浮かべられることの方が多いだろう。
この島を植民地としていたイギリス人の好む紅茶がスリランカ島内で栽培され、
それがセイロン・ティーのブランドで世界に広まったのである。
とはいえ、イギリスの植民地は世界中にあったにもかかわらず
その中で紅茶が栽培されている地域はごく限られている。
新しくは(イギリスとの)地理的な近さもあって
アフリカ大陸東岸のケニアなどで栽培されているようだが、
ブランド名として有名になっている紅茶の産地といえば
インドのダージリンとアッサム、そしてセイロンくらいである。

ダージリンとアッサムはともにインドの北東部、
ヒマラヤ山脈に差し掛かる標高の高い山地である。
セイロン・ティーも同様で、スリランカ島の中でも中南部に位置する
標高二千メートル前後の高地で栽培されている。
紅茶も日本茶(緑茶)も植物としては同じ種であり、
温暖で雨の多い環境でよく育つとされている。
ただしそれほど特殊な環境でしか育たないというわけでもなく、
実際日本の各地でお茶の木を見ることができる。
別に高地でしか育たないというわけでもなく、
「高地」であることに植物の育成に関わる特殊な効果があるとも思えない。
にもかかわらず紅茶の産地が高地にあるのは、
製品(茶葉)の香りがよくなるなどの経験的な事情・知見によるのだろうか。

スリランカの中で紅茶の産地としてとくに有名なヌワラエリヤを訪れた。
先に述べた「中南部に位置する標高二千メートル前後の高地」に位置する地域である。
くねくねと折れ曲がったヘアピンカーブの連なる坂道を
自動車で3時間以上上り続けてようやくたどり着いた。
当地の紅茶畑を見てまず驚くのは、本当に日本のお茶と同じ植物であり、
日本の茶畑と同じような光景が広がっていることだ。
緑茶と紅茶の違いは摘んだ茶葉の発光具合の違いのみ
などということを知識としては知っていても、
それを実際に目の当たりにした時には素直に驚いた。
こんもりとした深緑色の茂みが周期的な畝をなし、
それが斜面を埋め尽くすように続いている。
近づいてみれば、それは紛れもなく私たちのよく知っているお茶の葉っぱであった。

お茶の栽培の盛んなヌワラエリヤには、茶畑だけでなく紅茶の製造工場もいくつかある。
こんにちそれらのいくつかは観光地となっており、
中で紅茶を生産している様子を見学することができる。
集められた茶葉は工場で細かくされ、
ファンのような機械の取り付けられた装置で温風を当てられながらかき混ぜられていた。
この工程により、元は緑色だった茶葉の発酵が進んで「紅茶」になるのだという。
さらに一定時間加熱されたのちに冷まされ、
ちょうどよい感じになるまで発酵が進められる。
あとは時間をかけて茶葉を乾燥させ、最後は細かく砕いて紙袋に詰める。

その様子を見ていて、何かしらの違和感を持った。
雑な感じがする。
作業が、ではなく、加工されている茶葉が雑なのだ。
日本のお茶は若い新芽だけが摘まれて茶葉に加工されているはずで、
深緑色になるまで成長した葉っぱには製品価値がないという(;というのは
言い過ぎなようで、成長した葉っぱを加工したものが「番茶」となるらしい。
いずれにせよ価値は低下する)。
しかし、工場のベルトコンベアに乗せられ運ばれている葉っぱは
深緑色に成長しきったものばかりで、中には木の枝まで混ざっていた。
刈り取り機のような機械を使って刈り取ったのだろうか?

工場内部の見学を終えた見学客は、その後工場のロビーに案内された。
そこにはいくつもの種類の紅茶の茶葉が並べられており、
それらを使って入れられた紅茶の試飲ができるようになっていた。
目の前にあった紅茶の銘柄は「BOPF」。
飲んでみると、紅茶の良い香りが口の中に広がった。
そこで説明を始めたガイドの説明によれば、
BOPFとは「ブロークン・オレンジ・ピコー・ファニング」の頭文字。
「OP」にあたる「オレンジ・ピコー」はどこかで聞いたような名前だが、
これが日本茶と同じく「若い新芽」だけを摘んで作られた紅茶であるという。

ふーん、つまり「OP」のつく銘柄の製品は上等なもので、逆に普通の銘柄の紅茶は
先ほど工場の中で見てきたような成長しすぎた粗雑な葉っぱから作られているので、
値段は安いけれどもおみやげとしてはお薦めできませんよ、と。
そう言われてみると(言われてはいないか)、
「OP」のつく銘柄の紅茶は味がまろやか、というか無味というのに近い。
香りは紅茶なので紅茶の味がするように感じてしまうが、
よく味わってみると紅茶特有の渋みがほとんどない。
牛乳を混ぜてミルク・ティーにするとこの渋みがミルクにくるまれて
マイルドな独特の味になるが、
この渋みの正体は粗雑な葉っぱから出てきた雑味だった、ということなのか。

そういえば、かつて中国茶の最高級品として有名な龍井茶の産地龍井でも
同じようなことを聞いた。
「中国では日本と違い、渋みのない甘いお茶が尊ばれている。」
日本人でもお茶の渋みを好んでいるのかどうか分からないところだが、
紅茶に砂糖を入れて飲む欧米人、さらには
緑茶にこれでもかと砂糖を入れてしまうタイ人のことを考えると、
やっぱり日本人の味覚が他と違って独特なのかな。
紅茶向上に付属のおみやげ屋でオレンジ・ピコーの茶葉(ディーバッグでないもの)を
買って帰り、日本でそれを飲んでいるが、まるで味がない。
紅茶の香りはするのだが、これがいいんだか悪いんだかよく分からない。

赤道直下の熱帯に位置するスリランカにあって、
気候の冷涼なこの高地はイギリス人たちの避暑地として開発されてきた歴史を持つ。
中心部にはイギリス風のガーデンを模した公園があり、
周辺部にはゴルフ場やいわゆるコロニアル様式のホテルが作られている。
ヌワラエリヤ地区で最も格式の高いとされるコロニアル様式のホテルで
アフタヌーンティー」を楽しんだ。
ホテルのスタッフはスリランカ人だが、支配人や周囲の客の多くは欧米人だ。
注文したティーの銘柄は「ヌワラエリヤ・ピコー」。
ホテルの中のカフェオリジナルの銘柄だったようだ。
もちろん砂糖もミルクも入れずにストレートで飲んだが、
紅茶の香りの他に、確かに紅茶の味がした。
いや、日本で飲む紅茶の味とは違うのだが、無味ではない。
甘いというわけでもないのだが、とにかく味がする。
それを言葉でうまく表現できないのがもどかしいところだが、自然で心地よい味だった。
いや、よい紅茶にもはやり固有の味があるのだ。

ところで、「オレンジ・ピコー」の紅茶を飲んでもオレンジの味がするわけではない。
「オレンジ」は入れられた紅茶の色を表す言葉なのだ。
実際のところその色はごく普通の紅茶の色で、オレンジ色というわけでもないのだが、
ネーミングとしては悪くない。
そもそも紅茶を「紅茶」と書くのは漢字であって(中国語でも同様に書くらしい)、
本場の英語では「red tea」とは言わない。ただ「tea」である。
敢えていうときには「black tea」と言うようだが、
これは「コーヒーをブラックで飲む」という言い回しに似せた節がある(つまり
「レモンもミルクも入っていません」という意味)。

そんな中で、「golden tea」とか「white tea」とかいうのがあった。
先の工場の試飲会上にあった銘柄だが、その名から何となく察せられるように
かなりの高級品であるため試飲の用意はありません、とのことだった。
茶葉だけが展示されており、「white tea」の茶葉は確かに白っぽかった。
葉や茎に産毛が生えており、それが光を乱反射するので白く見えるのだという。
「silver tip」という名で売っている店もあった。
「golden tea」のほうは入れたお茶が金色になるのだとか。
これらのお茶はどんな香りで、どのような味がするのだろうか。
スリランカはかつてセイロンと呼ばれていたが、こんにちセイロンといえば
紅茶のブランドとして思い浮かべられることの方が多いだろう。
この島を植民地としていたイギリス人の好む紅茶がスリランカ島内で栽培され、
それがセイロン・ティーのブランドで世界に広まったのである。
とはいえ、イギリスの植民地は世界中にあったにもかかわらず
その中で紅茶が栽培されている地域はごく限られている。
新しくは(イギリスとの)地理的な近さもあって
アフリカ大陸東岸のケニアなどで栽培されているようだが、
ブランド名として有名になっている紅茶の産地といえば
インドのダージリンとアッサム、そしてセイロンくらいである。

ダージリンとアッサムはともにインドの北東部、
ヒマラヤ山脈に差し掛かる標高の高い山地である。
セイロン・ティーも同様で、スリランカ島の中でも中南部に位置する
標高二千メートル前後の高地で栽培されている。
紅茶も日本茶(緑茶)も植物としては同じ種であり、
温暖で雨の多い環境でよく育つとされている。
ただしそれほど特殊な環境でしか育たないというわけでもなく、
実際日本の各地でお茶の木を見ることができる。
別に高地でしか育たないというわけでもなく、
「高地」であることに植物の育成に関わる特殊な効果があるとも思えない。
にもかかわらず紅茶の産地が高地にあるのは、
製品(茶葉)の香りがよくなるなどの経験的な事情・知見によるのだろうか。

スリランカの中で紅茶の産地としてとくに有名なヌワラエリヤを訪れた。
先に述べた「中南部に位置する標高二千メートル前後の高地」に位置する地域である。
くねくねと折れ曲がったヘアピンカーブの連なる坂道を
自動車で3時間以上上り続けてようやくたどり着いた。
イメージ 1
当地の紅茶畑を見てまず驚くのは、本当に日本のお茶と同じ植物であり、
日本の茶畑と同じような光景が広がっていることだ。
緑茶と紅茶の違いは摘んだ茶葉の発光具合の違いのみ
などということを知識としては知っていても、
それを実際に目の当たりにした時には素直に驚いた。
こんもりとした深緑色の茂みが周期的な畝をなし、
それが斜面を埋め尽くすように続いている。
近づいてみれば、それは紛れもなく私たちのよく知っているお茶の葉っぱであった。
イメージ 2
お茶の栽培の盛んなヌワラエリヤには、茶畑だけでなく紅茶の製造工場もいくつかある。
こんにちそれらのいくつかは観光地となっており、
中で紅茶を生産している様子を見学することができる。
集められた茶葉は工場で細かくされ、
ファンのような機械の取り付けられた装置で温風を当てられながらかき混ぜられていた。
この工程により、元は緑色だった茶葉の発酵が進んで「紅茶」になるのだという。
イメージ 3
さらに一定時間加熱されたのちに冷まされ、
ちょうどよい感じになるまで発酵が進められる。
あとは時間をかけて茶葉を乾燥させ、最後は細かく砕いて紙袋に詰める。

その様子を見ていて、何かしらの違和感を持った。
雑な感じがする。
作業が、ではなく、加工されている茶葉が雑なのだ。
日本のお茶は若い新芽だけが摘まれて茶葉に加工されているはずで、
深緑色になるまで成長した葉っぱには製品価値がないという(;というのは
言い過ぎなようで、成長した葉っぱを加工したものが「番茶」となるらしい。
いずれにせよ価値は低下する)。
しかし、工場のベルトコンベアに乗せられ運ばれている葉っぱは
深緑色に成長しきったものばかりで、中には木の枝まで混ざっていた。
イメージ 4
刈り取り機のような機械を使って刈り取ったのだろうか?

工場内部の見学を終えた見学客は、その後工場のロビーに案内された。
そこにはいくつもの種類の紅茶の茶葉が並べられており、
それらを使って入れられた紅茶の試飲ができるようになっていた。
目の前にあった紅茶の銘柄は「BOPF」。
飲んでみると、紅茶の良い香りが口の中に広がった。
そこで説明を始めたガイドの説明によれば、
BOPFとは「ブロークン・オレンジ・ピコー・ファニング」の頭文字。
「OP」にあたる「オレンジ・ピコー」はどこかで聞いたような名前だが、
これが日本茶と同じく若い新芽だけを摘んで作られた紅茶であるという。

ふーん、つまり「OP」のつく銘柄の製品は上等なもので、逆に普通の銘柄の紅茶は
先ほど工場の中で見てきたような成長しすぎた粗雑な葉っぱから作られているので、
値段は安いけれどもおみやげとしてはお薦めできませんよ、と。
そう言われてみると(言われてはいないか)、
「OP」のつく銘柄の紅茶は味がまろやか、というか無味というのに近い。
香りは紅茶なので紅茶の味がするように感じてしまうが、
よく味わってみると紅茶特有の渋みがほとんどない。
牛乳を混ぜてミルク・ティーにするとこの渋みがミルクにくるまれて
マイルドな独特の味になるが、
この渋みの正体は粗雑な葉っぱから出てきた雑味だった、ということなのか。

そういえば、かつて中国茶の最高級品として有名な龍井茶の産地龍井でも
同じようなことを聞いた。
「中国では日本と違い、渋みのない甘いお茶が尊ばれている。」
日本人でもお茶の渋みを好んでいるのかどうか分からないところだが、
紅茶に砂糖を入れて飲む欧米人、さらには
緑茶にこれでもかと砂糖を入れてしまうタイ人のことを考えると、
やっぱり日本人の味覚が他と違って独特なのかな。
紅茶向上に付属のおみやげ屋でオレンジ・ピコーの茶葉(ディーバッグでないもの)を
買って帰り、日本でそれを飲んでいるが、まるで味がない。
紅茶の香りはするのだが、これがいいんだか悪いんだかよく分からない。

赤道直下の熱帯に位置するスリランカにあって、
気候の冷涼なこの高地はイギリス人たちの避暑地として開発されてきた歴史を持つ。
中心部にはイギリス風のガーデンを模した公園があり、
周辺部にはゴルフ場やいわゆるコロニアル様式のホテルが作られている。
ヌワラエリヤ地区で最も格式の高いとされるコロニアル様式のホテルで
アフタヌーンティー」を楽しんだ。
ホテルのスタッフはスリランカ人だが、支配人や周囲の客の多くは欧米人だ。
注文したティーの銘柄は「ヌワラエリヤ・ピコー」。
ホテルの中のカフェオリジナルの銘柄だったようだ。
もちろん砂糖もミルクも入れずにストレートで飲んだが、
紅茶の香りの他に、確かに紅茶の味がした。
いや、日本で飲む紅茶の味とは違うのだが、無味ではない。
甘いというわけでもないのだが、とにかく味がする。
それを言葉でうまく表現できないのがもどかしいところだが、自然で心地よい味だった。
いや、よい紅茶にもはやり固有の味があるのだ。

ところで、「オレンジ・ピコー」の紅茶を飲んでもオレンジの味がするわけではない。
「オレンジ」は入れられた紅茶の色を表す言葉なのだ。
実際のところその色はごく普通の紅茶の色で、オレンジ色というわけでもないのだが、
ネーミングとしては悪くない。
そもそも紅茶を「紅茶」と書くのは漢字であって(中国語でも同様に書くらしい)、
本場の英語では「red tea」とは言わない。ただ「tea」である。
敢えていうときには「black tea」と言うようだが、
これは「コーヒーをブラックで飲む」という言い回しに似せた節がある(つまり
「レモンもミルクも入っていません」という意味)。

そんな中で、「golden tea」とか「white tea」とかいうのがあった。
先の工場の試飲会上にあった銘柄だが、その名から何となく察せられるように
かなりの高級品であるため試飲の用意はありません、とのことだった。
茶葉だけが展示されており、「white tea」の茶葉は確かに白っぽかった。
葉や茎に産毛が生えており、それが光を乱反射するので白く見えるのだという。
「silver tip」という名で売っている店もあった。
「golden tea」のほうは入れたお茶が金色になるのだとか。
日本人にとって紅茶は紅いもの、日本のお茶とはまるで異なる西洋的な香りのするもの、
なのだが、紅茶の世界はそれほど狭くはなさそうだ。
これらのお茶はどんな香りで、どのような味がするのだろうか。