(続き)「ベルヌーイの定理」との格闘

飛行機の翼の上下に圧力差が生じるのもヘリコプターのローターと同じ原理なのではないか? この問題提起に立ちふさがるのが「ベルヌーイの定理」である。曰く、「流速が速いほどその流体の圧力が低い。」事実、飛行機の翼の上下で気流の速度を測定すると、翼…

ヘリコプターを飛ばすのは揚力なのか?

飛行機が空を飛べるのは、飛行機の翼が揚力を生むから。それは誰もが知っている。けれども、この揚力というものをよく理解している人はまずいない。「飛行機が飛ぶことを疑うわけではないが、何百トンもの金属の塊が空を飛ぶことに違和感を感じる」「いつも…

富に関する考察(後編) ;バブル経済の正体

経済学の理論的な観点からこんにち最も興味深いテーマの一つとして、ビットコインに代表される暗号通貨が挙げられるだろう。その技術的な側面もさることながら、ビットコインの運用開始が2009年でそれ以前に存在していなかった富が現在(2021年1月)では数兆…

富に関する考察(前編) ;中国人の豊かさの謎

中国人の豊かさは大きな謎の一つである。つい30年前まで中国人は低賃金の代名詞であったのに、10年前には中国人の爆買いなくして日本の経済は成り立たないとまで言われ、今では中国人の方が日本人より豊かなイメージさえ日本社会に広まっている始末。実際の…

2020年を振り返る(後編)

2020年総括ふたつめのテーマは、アメリカ大統領選挙について。前回トランプ大統領が勝利した際に書いた記事は↓にある。https://windmillion.hatenablog.com/entry/18842138(アメリカ大統領選挙(前編) ;2016-11-12)https://windmillion.hatenablog.com/e…

2020年を振り返る(前編)

2020年を10年紀のは始まりとするか終わりとするか。厳密には2010年代の最終年となるが、全世界の多くの人々が新たな10年期の始まりと捉えているだろう。2020年はそれくらい激変の年だった。個人的に私生活も激変したが、それとは別次元で新型コロナウィルス…

マイノリティを擁護する理由

先日、朝の民放情報番組でLGBTの権利拡大に反対するどこかの議員の話題が取り上げられていた。当然のことながらその議員をバッシングする傾向の強い姿勢で扱われており、その議員に対して辞職を求める強迫も多く届けられている、との説明もあった。特に政治…

神殺しの不確定性

前回の記事で述べたように、量子力学において言われる「確率的にしか分からない」という言葉には全く異なる二つの意味が含まれている。一つ目は「基礎的な粒子は個性を持たないこと」に由来する不確定性。こちらは割と誰にも受け入れられやすい。二つ目は「…

シュレディンガーの猫に霊があるならば非道な実験を許すか

ある日、シュレディンガーの猫は人間に捕まえられ、密室に閉じ込められた。必死で抵抗するも出口は開かず、また居心地も悪くなかったのでそこで大人しく座っていることにした。ところがそこには恐ろしい仕掛けが施されていた。ごく弱い放射線源と放射線検出…

銀河系の形成(3/3) そして円盤へ

銀河系と言えば、人々はまずきれいに渦を巻く円盤を思い浮かべる。実は私たちの銀河系がどのような形をしているのかを推測するのはかなり困難なことであるらしいが、お隣のアンドロメダ銀河をはじめとして宇宙にはきれいな円盤型の銀河系が無数にある。宇宙…

銀河系の形成(2/3) ブラックホールは実在した!

銀河系の形成にまつわるもう一つの謎は、その中心にあるという超巨大ブラックホールについてである。私たちの銀河系の中心には、私たちの太陽の400万倍の質量を持つ超巨大ブラックホールがあるという。1年ほど前に「ブラックホールの姿の直接観測に成功した…

銀河系の形成(1/3) 自由な宇宙に生じる束縛状態

宇宙物理学において、銀河系形成のメカニズムは一つの大きな謎である。径方向の回転速度分布が不自然でそれを説明するためにダークマターの概念が導入されたことはよく知られているが、それ以外にも、中心部に超巨大ブラックホールが存在するとされているこ…

新型コロナウィルス感染症の謎:追記Ⅱ

前回「追記Ⅰ」を書いてから1か月が過ぎた今、日本、特に首都圏ではすでに新型コロナウィルス感染症の封じ込めに成功したという安堵感が広がっている。5/25(月)には全国で緊急事態宣言の解除も宣言された。特に全国の日ごと新規感染者数ではこのところきれい…

#有名人の政治利用を許さない

このところ「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグがマスコミでもネットでも頻繁に取り上げられている。ことの発端は、5/8(金)に一般人がツイッターでそのような投稿をしたことに始まり、その後の一週間でそこに多くの有名人を含むのべ500万もの…

日本のPCR検査に関する主張の考察

今回の新型コロナウィルス感染症に関して、日本において最も熱い議論となっているテーマの一つがPCR検査である。このテーマに関しては、本感染症が国内で深刻になり始めた2月末からこんにち(5/15)に至るまで形を変えつつも議論が続いている。いや、正しく…

新型コロナウィルス感染症の謎:追記Ⅰ

先週書いた新型コロナウィルス感染症の謎について、手掛かりになるかもしれない情報が出てきた。アメリカを中心に、国民の中で本ウィルスの抗体を保有する人の比率を調査しようという動きが出てきている。アメリカのある都市では、市民の30%がすでに抗体を持…

新型コロナウィルス感染症の謎

今年の1月中旬あたりから世界的なニュースとして騒がれ出した新型コロナウィルス感染症、2月までは「ダイヤモンドプリンセス号」の名前とともに話されることが多かったものの、3月には欧州で感染爆発し、4月に入って以降はアメリカ(USA)がそれを上回る…

多様性の価値(後編) 日本の製造業復興のKSF

(前編からの続き) テレビに代表される先進国のマスメディアがつまらなくなったのは、画一化された価値観に縛られて停滞状態に陥っているためである。けれどもそれはマスメディアに限った話ではない。日本人は比較的安定を好む保守的な民族であるが、生活ス…

多様性の価値(前編) テレビがつまらない

2010年代はスマホとSNSの時代だったと言われている。確かに2010年代が始まる前の2010年を思い出すと、スマホ・SNSは今ほど社会に普及していなかった。インターネットのユーザーはPCを通じてネットにアクセスしており、ユーザーの層的に、地域的に、あるいは…

韓国の野望・後編

(前編からの続き) 今回の韓国政府による「GSOMIA破棄断念の決断」により、「南北朝鮮の統一」という文大統領の野望は達成がかなり困難になった。この決断はアメリカとの同盟関係の重要性を韓国国民に再認識させる結果となり、今後再びこれを破棄すると言い…

韓国の野望・前編(2019/11/23)

正直韓国ネタで文章を書くなんて無粋な気がするし、ありきたりで新鮮味のないことしか書けないのでこれまでもスルーしてきたが、今年に入ってからの盛り上がり方はこれまでとは少し違う。考察のし甲斐、文章に記しておく価値があるように思われる。というこ…

スペイン旅行記Ⅱ(4/4) ;情熱とガウディの夢

スペインの諸都市を旅行する者は、芸術ということについて考えさせられる。そもそもヨーロッパの大抵の都市は芸術であふれかえっているのだが、その中でもスペインは別格なところがある。芸術とは何かと考えてみると、英語では「Art」、これは意味としては「…

スペイン旅行記Ⅱ(3/4) ;パエリヤ食べ歩き・下

二皿目のトライは、トレドの旧市街にあるレストランでのこと。トレドはマドリッドの近郊にある都市で、小高い丘の上に造られた城塞都市の様子を今に残す観光都市である。全体が世界遺産に登録されている。歴史的な石造りの家 トレドのカテドラルと市街地 屋…

スペイン旅行記Ⅱ(2/4) ;パエリヤ食べ歩き・上

スペインを代表する料理は何だろう。旅行者がスペインでよく口にする料理となると、タパスだろうか。しかしタパスとは一ロサイズの小皿料理のことであり、特定の食材や調理法による料理名ではない。もっぱらバルでアルコール飲料のつまみとして出されるもの…

スペイン旅行記Ⅱ(1/4) ;太陽とガウディの街

今年の夏休みを利用してスペイン旅行に行った。首都マドリッドから南部アンダルシア地方のグラナダ、それに北東部カタルーニャ地方のバルセロナの主要三都市を巡る旅行である。スペインには5年前(2014年)の同じ時期にも旅行に行っており、そのときにもマド…

中国の脅威に関する考察2019(2/2) ;国際秩序への脅威

(1/2 からの続き) 共産主義における他者とのかかわり方には独特なものがある。彼らは仲間内の人物を「同志」と呼ぶ。これは逆に言えば、同志でないものを同じようには扱わないということである。同じ価値観や同じ考えを持たないグループとの間に高くて強固…

中国の脅威に関する考察2019(1/2) ;国力の脅威

2018年まで日本国内では中国経済のバブル崩壊に関する話がなされていたが、2019年に入ってからは米中の関税合戦に始まる激しい経済戦争の様子を見て、中国経済のバブル崩壊に関する主張はまるで見かけなくなってしまった。中国経済、あるいは中国という国そ…

スリランカ旅行記(4/4) ;内陸の旅

スリランカの首都がコロンボ以外のどこかだという話をたまに聞くが、 この国の首都はコロンボ以外にはあり得ない。 道路網はよく設計・整備されており、 また国内の他の都市へ続く主要な幹線道路もコロンボを起点としている。 鉄道についても同様だ。 朝早く…

スリランカ旅行記(3/4) ;内戦の影

スリランカの中でも紅茶で有名なヌワラエリヤ地区には、タミル人が多く住んでいる。 スリランカ国民の多数派はシンハラ人と呼ばれる民族で、シンハラ語を話す。 見た目はインド人と全く変わらないのだが、分かる人には違いが分かるらしい。 まあ、欧米人にと…

スリランカ旅行記(2/4) ;白い紅茶

スリランカはかつてセイロンと呼ばれていたが、こんにちセイロンといえば 紅茶のブランドとして思い浮かべられることの方が多いだろう。 この島を植民地としていたイギリス人の好む紅茶がスリランカ島内で栽培され、 それがセイロン・ティーのブランドで世界…