SFファンよ「インセプション」

先日、映画「インセプション」を見てきた。
「SFファンなら観るべし」との評判に従ってのことだが、大いに納得。
SF嫌いがSFを嫌う二大要素のうちの一つ、「話が難解」が
そのまま当てはまる(ちなみにもう一つの要素は「オタクっぽい」)。
重要人物の夢に潜入して自分達に都合の良い考えを植えつけるミッション、
なんていうあらすじを事前に聞き、もうこれだけで難解な話だと予想されたが、
話の導入部は確信犯的にややこしく作っていると思われた。
 
実はその後は予想よりもはるかに分かりやすい展開で、
それを盛り立てるアクションも華やかで飽きさせない。
思うに、導入部をわざと難しくすることでその後の展開を
「意外と分かりやすい」と感じさせるのが制作者側の狙いだったのでは、と。
導入部で脱落した者は拒絶反応で後半も受け入れられなくなるだろうが、
それはそれで諦めてね、と。
カップルの客が多かったが、上映終了後退出していく彼らを見ると
大抵女性側は冴えない顔をしているように見えた。
まあこの映画は一人で見に行ったほうがいいと思う。
 
これって果たしてSFなのか?
なんでもありの夢の中の話というのならむしろファンタジーなのでは?
これこそ本当のエルフ・フリーのファンタジーだ、とは私は思わない。
話の中核となるアイデア/ネタがしっかりと作られており、
その核を基にして主人公の人物像やストーリーが形作られていく、という
典型的なアイデアSFの構造が見て取れるからである。
もし人の夢に潜入できる技術があれば、夢の中で他者の秘密情報を盗んだり、
逆に都合のよい情報を植えつけて洗脳したりする職業が生まれるだろう。
あるいは、それを個人的かつ退廃的な楽しみに利用する者が出てくるだろう。
でもそんなことを安易にやっていいものなのか?
そう言われて黙っているSF好きはまだまだ修行(読書)が足りませぬ。
 
とはいえ、これは「SF小説」として創られたSFではないと思う(実際
簡単な検索ではこの作品の原作は見つけられなかった)。
無重力下でのアクションはまさに映画のためにあるものだし、
各自各状況下で同時にミッションを完遂せよ、という設定は
映像作品でこそ映えるが小説では表現するのが難しい。
逆に、「夢に引きこもってしまった者に『夢から抜け出せ』というアイデア
植えつけるとどうなるか?」
(;抜け出す方法がね、ネタバレなので書きませんが)
という中核のアイデア/ネタが映画だと強く打ち出せないというジレンマ、
そして複雑なアイデアゆえ内容が難解になってしまうという宿命を背負い、
DVD化されてマニアの間でのみ高い評価を得ていくことになるのでしょうね。
 
それにしても、レオ様って難しい映画にばかり出ている気がする。
ブラッド・ダイヤモンド」とか「ワールド・オブ・ライズ」とか。
どっちも観たけど。
個人的には「タイタニック」すごく好きだし、
あれはマニアからもマニアなりの高い評価を得られる映画だと思う。
きっと俺とレオ様は気が合うと思う。