ワシントン・レポート (2/3) ;キャピタル

ワシントンD.C.アメリカの首都であり、その政治的なシンボルはホワイトハウス
というイメージなのだが、ワシントンは何もかも規模が大きく、相対的にホワイトハウスが意外と小さく見えた。
むしろ、ワシントンの政治的なシンボルは国会議事堂に当たるキャピタルである。
ここにも外国人でさえ無料で入ることができ(ただし厳重なセキュリティチェックを通過する必要あり)、
ツアーに参加すれば内部の部屋などまで見せてくれるという。
地球の歩き方」には「ツアーに参加するには事前の予約が必要だが、当日枠で参加できる可能性も」
とあったが、実際はほとんどの見学者が当日その場で申し込みをしていたようだった。
ちなみに私はツアーには参加しなかったが、中にある資料展示室には行ってきた。
 
アメリカの国会は上院と下院の2つからなる。この点は日本と同じ。
ただし日本と違うのは、それぞれの間に明確な性格的違いがあるという点だろう。
「上院」「下院」という日本語訳は誰がどう考えたか知らないが
(※調べたところ、これ以前の国会議事堂では実際に1Fと2Fに割り当てられていたことが語源だとか)、
下院と訳されるHouseは国民の意見をよく反映させることを目指しているのに対して、
上院と訳されるSenateの目指すところはそうでない、という違いがある。
上述のようにHouseは国民の意見をよく反映させることを目指しているため、
代議員の選出数は地域住民の人口に対応している。
また、世論の変化に敏感に対応するために、その任期はわずか2年であるとのこと。
9.11のような事件が世論をがらりと変えてしまった場合、
最長でも2年後にはその世論を反映した議会が選挙によって形成されることになる。
 
では、Senateの目指すところ、あるいはその役割とはなにか。
ちなみに「Senate」というとスター・ウォーズの銀河共和国を構成する議員がそういう肩書きであるが、
語源は(多分)「元老院」と訳される古代ローマの議会議員の身分である。
こちらの訳のほうが絶対かっこいいし、何より偉そうだ。
現代アメリカの場合だと、Senateの議員は各州から2人ずつ選出され、合計でちょうど100人となる。
アリゾナやハワイからも2人、カリフォルニアやニューヨークからも2人である。
日本でも一票の格差が問題になっているが、これはもはやそのレベルではない。
民主主義の理念を度外視したこのSenateの目指すところ、それは
「coolness and wisdom」
(※意味はこうだったと記憶しているが、言葉はもしかしたら違っていたかも、ごめん)
すなわち、その時々の国民の意見は正しくないかもしれない、という考え方に基づき、
世論から少し距離を置いて冷静に、英知に基づいた議論を行うこと、を目指しているのだという。
そのため、議員の任期も6年と長い。
このような二院制を考えた昔の賢人は、9.11のような事件がもたらす国民感情までをも
考慮していたのである。
 
この点は非常に重要であると思う。
国民の考えが正しいとは限らない。民主主義の理念には反するが、これは紛れもなく事実である。
昨今の日本やアメリカの世論を見ればそれでもよいのだが、ここに確実な例を挙げる。
今、国民全員にもれなく100万円をばら撒き、その支出は200年後の国家予算に計上する
という法案があったとする。
200年後に私は生きていないし、あなたの子供も生きてはいない。
となれば、ただでもらえる100万円に反対する国民はバカだ。
が、長期的な視野で見れば、こんな法案に賛成する国民はやはりバカだ。
この考えをさらに発展させれば、国民だけでなく国会議員の考えることもやはり正しいとは限らない。
と考えるべきだと思う。
今の日本では法案や予算を国会議員(の身内)が考え出しているが、
この点についてアメリカの上院のようなフール・プルーフ的システムにできないかと思った。
たとえば法案の立案、調査、および質問に対する回答は第三者機関が行い
(提出というか立案請求は国会議員が行う)、その後の質問、審議、および審査(投票)を
国会議員が行う、というように。
ま、国会にあれこれ指図できる身分ではないが、
身の回りでこういうことを行う機会があった場合には参考にさせてもらいます。