英国王のスピーチ

映画「英国王のスピーチ」を先日観てきた。
アカデミー賞の主要部門を多く受賞したせいか、映画館は結構賑わっていた。
まあ、時間ぎりぎりに行って座れないほどではなかったが。
前評判では「SNS」とどちらが上か、みたいな話になっていたが、
観た率直な感想としては、まあ「英国王の…」のほうが完成度が高くて面白かった。
 
そりゃ確かに、主演男優が何かのインタビューで語っていたように、派手な爆発シーンはないし、
でてくるのはおっさんとおばさんばかりだし、ドキドキハラハラする展開もない。
その点「SNS」には若くて見栄えのいい男女が出てくるし、何と言ってもショーンが不気味でかっこよかった。
しかし、両者のできの違いを決定付けたのは、私は「実話力」だったと思う。
だってフェイスブックって、まだ終わってないじゃん。あのオタクCEOだって実際まだ20代でしょ。
SNS」を見終わった後、「あれ、ここで終わりなの?」という感じが残ったことを記憶している。
一方のジョージVIは第2次大戦の時代の人だし、実際それが映画でもクライマックスになっていた。
昔の話であれば、面白いエピソードをいくらでも探して持ってこられるし、
逆に面白くなければ無視しても構わない。
 
しかしそう考えると、実話に基づいた映画は、その実話や歴史的な背景をよく知っていないと
意図されたほど十分に楽しめない、という側面もあることが分かる。
国王の息子が公園を歩いていても誰も気づかないのは、当時テレビがなかったから、とか、
最初の「世界の人間の1/4を統治する国王」ってそれは言い過ぎだろ、と思ってよく考えると、
当時はまだインド(とその周辺国)がイギリスの支配下にあったから、とか後から気づいたわ。
自分の持っているあの時代のイギリス、ヨーロッパの知識は
せいぜいNHKの「映像の20世紀」を観て得た程度だが、
あの国王兄弟のエピソード(兄の勘当話や弟の吃音)などを知っていればもっと楽しめただろうと思う。
特に、弟の吃音の原因となったトラウマ的事件について明かされなかった点が不満。
思うにそれは、きっとイギリスでは誰もが知っているほど有名でかつあまり大きな声では言えない話、
なのではないかと。
それに、弟の王妃がすごくいい人だった。
「プロポーズを2度断った(3度目に受け入れた)」といっていたから、
その辺についても外国人の知らない面白いエピソードがあったに違いないと思う。
あの当時なら、今のダイアナ妃より注目されていてもおかしくないくらい。
 
自分は今英会話学校に通って英語の勉強をしているので、
今回は特になるべく字幕を見ないようにして映画を観た。字幕は答え合わせ程度。
すると確かに、役者の演技がよく分かるような気がした。
この映画には早口でまくし立てるようなキャラも出てこないし(あ、ヒトラー;本物が少し出てきたか)、
特に最後の演説は日本人でも十分聞き取れる程度。
思うに、英語は例えるなら「草書体」、日本語やドイツ語は「楷書体」みたいなもの。
だから、日本人やドイツ人、それに吃音を克服した直後のイギリス人の発音は日本人に分かりやすい。
逆に「SNS」は早口なことで有名だが、自分は字幕ばかり読んでいたのでそのことに気づかなかった。
(まあ飛行機の中で適当な気持ちで観ていた、というのもあるのだが…)
次は「SNS」のオタクCEOを字幕なしで聴き取ってみたいわ。
さらにその次は、オタクCEOを口で言い負かすことかな。日本語で、だったらできるかも。