ボルネオ旅行記(1/4) ;熱帯ジャングル

遅めの夏休みをとり、ボルネオ島北部にあるコタ・キナバルに行ってきた。
ボルネオ島は日本よりも大きく、島がインドネシア、マレーシア、そしてブルネイ
3つの国によって占められている。
コタ・キナバルはそのうちマレーシアに属している。
ボルネオ島は赤道直下に位置しており、ほぼ全域が熱帯ジャングルである。
タイヤベトナムではいまいち感じなかった熱帯ジャングル感を満喫することが
今回の旅行の主目的であった。
 
コタ・キナバルの街の北方にはキナバル山という4,000m級の山があり、
その麓に手付かずの熱帯ジャングルが広がっている。
これがマレーシアの国立公園として保護されており、世界遺産にも登録されている。
まずはここへ行くツアーに参加し、熱帯ジャングルへの突入を図った。
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ディープで濃密な緑の魔境、足元はぐちゃぐちゃ、湿度はムンムン、鳥はギャアギャア
…という感じを覚悟(期待)して行ったのだが、
連れて行かれたところは案外そうでもなく、清潔で空間的にもゆとりがあった。
どうやら国立公園の入り口のごく一部を見学用に開発したものらしい。
地面は切り開かれ、階段などもよく整備されていた。
なんだ、これならタフでワイルドな冒険野郎でなくとも
手軽かつ快適にツアーをこなすことができるわけだ。
 
実際、コタ・キナバル周辺が想像以上に発展・近代化されていたことに驚いた。
今年の7月ここでTPPの会議が開催され、関係各国の要人達が集結した
というニュースは聞いていたが、市民の生活環境からして相当なものだ。
道路は広くてきれいで、人々はその周囲に作られた近代的な集合住宅に暮らしている。
それでいて、物価水準は周辺国と同じく日本の3分の1程度。
人々の気質は穏やかで、治安もよい。なにより、観光客相手にがっつかない。
東南アジアの中ではタイが頭一つ抜き出ていると思っていたが、
「貧しさを感じさせるところがない」という点ではここのほうがバンコクよりも上だ。
 
話を戻すと、このキナバル・パークは全然暑くもない。
標高が1,500m前後と高く、そのために気温も30℃には届かない程度。湿度も高くない。
動物も鳥も、昆虫すらもほとんどいなかった。
せいぜいおかしな鳴き声のセミと、日本とあまり違わないアリの行列くらい。
もっと奥地に行けば、金属光沢に輝くクワガタや人面カメムシ、ハナビラカマキリなども
見られるらしいのだが…。
その代わり、ボルネオ・ジャングルの象徴にもなっているラフレシアの花は見られた。
これは花の寿命が4~5日しかなく、栽培もできないので運が悪いと見られないそうだ。
しかし私たちは運がよかったようで、花だけでなくつぼみや咲き終わった残骸も
見ることができた。うん、これは大抵テレビには映されない光景だ。
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それは、個人の経営する農園の一角に生えていた。
農園の中に仮設の道を敷き、ラフレシアの花やつぼみを保護するフェンスを作り、
あとは家族総出で農園の入り口に陣取って入場者から入場料を受け取る。
その額は、個人でも団体でも関係なく一人\1,000弱(RM30)。
「楽して相当なぼろ儲けです」とは現地育ちのガイドさんの言葉。
 
実は、今回コタ・キナバル旅行を計画したのには、もう一つ別の目的があった。
「キナバル山の登頂」もしくは「そのための情報収集」である。
キナバル山を頂上まで登るためには、
必ず現地ガイドを一人雇って山小屋に宿泊しなければならない。
そういう制度を作ることで、
マレーシア政府はキナバル山への登山者の総数を制限しているのである。
以前日本でキナバル山登山を企画している旅行社に申し込もうとしたところ、
「2か月前に言われても遅いですよ。中には半年前から応募している人もいます。」
と言われた。しかしネットなどで調べると、
現地の旅行代理店に申し込んでも登れる、という話もある。
いざ、現地の日本人向け旅行社で日本人スタッフに話を聞いたところ、
「世界的に連休となるクリスマス~年始、日本と中国で連休となるGWを外せば、
 一人であればおそらく翌日とかでも取れますよ。うちのHPでも申し込めます。」
とのこと。ちなみに、その旅行社のツアーはここ↓。
http://malaysia.wendytour.com/package?hl=jp&txtkw=%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%83%90%E3%83%AB%E5%B1%B1&dc=&ca=&bg=&hn=&numperpage=&dd=
今回の旅行では時間と用意の必要な登山は断念し、
もう少しお手軽なジャングル・ツアーに専念することにした。
 
キナバルとは反対側に当たるコタ・キナバルの南側には、
リバー・クルーズのできるマングローブの林が広がっている。
こちらへ行くツアーの目的は2つ。テングザルと熱帯ホタルである。
テングザルのほうは、まあサル。
「あ、あそこにいる、わぁ、こっち向いた!鼻が見える」という雰囲気を楽しむ。
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同じマングローブの河に日が沈んでから繰り出すと、今度は
すぐに熱帯ホタルのきらめく電飾ツリーが見えてくる。
これは下手な比喩ではなく、本当に(やや貧相な)電飾ツリーそのものにしか見えない。
ホタルは葉から蜜を出す特定の木に集まるのだそうで、
おまけに明滅パターンを同期させる蛍光、ではなく傾向がある。
そしてなにより、日本のホタルと違って光が白く、するどい。まさに生きたLED。
「ここのホタルは日本のホタルと違って、小さいです。米粒のよう。」
ガイドがうまく捕まえた一匹を見せてもらうと、それは彼女の言うとおり
タイ米のような形と大きさであった(ただし姿はホタルそのまま)。
 
この夜は、ホタルだけでなく隕石の落下(いわゆる火球)までも見た。
青くゆっくりと静かに輝きながら流れた末、砕けて空に四散した。
「私はガイドになるまで、ボルネオに住んでいながらラフレシアもテングザルも、
 木に集うホタルの群れも見たことがありませんでした。
 この仕事をしていることで、それらばかりでなく今夜また珍しいものを
 見ることができました。私はこの仕事が好きで、死ぬまで続けたい。」
こういう風に物事を考える人間と、私は他のアジアの国で出会ったことがない。
こういう人物(;日本語の観光ガイド)が死ぬまで好きな仕事を続けられるよう、
日本人も中国人に負けないくらいマレーシアに観光に行ってほしいと願う。
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