シンガポール旅行記(1/3) ;三大異味

このGWにシンガポールへ旅行に行った。旅の目的は、特になし。
東南アジアの中でまだシンガポールへは行ったことがなかったこと、
そして久し振りに南国の雰囲気を感じたくなったことが
シンガポールへ行こうと思った主な理由である。
”南国の雰囲気”にもいろいろあるが、イチバンはやはり食べ物だろう。
なかでも、南国フルーツ。
そして南国フルーツとくれば、真っ先に思い浮かぶのはドリアンである。

これまで多くの食べ物を食べてきたが、その中には異常においしいものがある。
「何がそうおいしいのか?」と聞かれても言葉ではうまく表現できない
そういうおいしさのことである。
このようなおいしさのことを私は「異味」と名付けた。その例としては、
私の場合、名古屋近辺に展開している”とあるチェーン店のラーメン”が挙げられる。
白いスープの色から「とんこつ味だ」という人もいるが、そうだとは思えない。
風味は魚介系の感じだが、よくある魚介系つけ面のスープとも違う。
「じゃあ何なの?」と聞かれても、言葉ではうまく表現できない。
ただ、おいしい。スープは最後まで飲んでしまわざるを得ない。そういうラーメンだ。
そういうものを私はあと二つ挙げられる。
一つは、モロッコで飲んだオレンジジュース。
そしてもう一つがドリアンである。
ドリアンのおいしさは、言葉では表現できない。だからこそまた食べたいと思うのだ。

中心部からはやや離れたところに位置するホテルの周辺にも果物屋は何軒かあった。
売られているものを見ると、マンゴーにスターフルーツ。その他にはりんごやオレンジ。
マンゴーは確かに立派でおいしかったが、それ以外はあまり南国らしさを感じない。
何よりドリアンがない。うーん。
二日目。シンガポール中心部の観光地やショッピング街を歩く。
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観光の傍ら眼は抜け目なくドリアンを探すも、やはり見つからない。こんなはずでは。
季節的にもそう悪くはないはずなのだが…。
諦めかけていた三日目、中華街の奥でついにドリアンを山積みにした屋台を発見!
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ひとつ28S$(=2,500円)もしたが、迷わず購入してその場で食べた。
うーん、これだ。前回マレーシア・コタキナバルで食べて以来2年ぶりの味。
バニラ風味のカスタード・クリームを湯葉で包み、少し炭酸パウダーをふりかければ…
いや、何か違う。やはりあの芳醇な風味を言葉で表現することはできないのだ。
その後、ブギス駅周辺で何軒かドリアンを扱う果物屋を見つけた。
ここは地元民向けのようで、先述の屋台の半額でおいしいドリアンを売っていた。
ちなみに、ブギス駅周辺は第2の中華街のようになっている。
それ以外の地区の果物屋にはなく、
中華街でのみドリアンが売られているのには何か理由があるのだろうか?

シンガポールではどこへ行っても団地・集合住宅があり、
その一階部分が地元民向けのフードコートになっていることが多い。
もちろん住民でなくても利用できる。
店の数も種類も豊富なので、(豪華さを求めなければ)食事に困ることはない。
そこの住民に合わせた料理屋が多く、そこでしか食べられない料理もあったりする。
インド人街のフードコートにはラッシーを売るドリンク屋があったが、
シンガポールで飲んだドリンクの中ではこれが一番おいしかった。
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ホテルは素泊まりで朝食が出ないので、朝食はもっぱらこのフードコートを利用した。
ある朝、朝食としてスープワンタンをオーダーした。
フードコートの料理は安いだけあって見栄えはあまりよろしくない。
ところが、このワンタンのスープをひとくち飲んで驚いた。なにこのうまさ!
中華料理は一般的に味付けが濃く、味付けでおいしいと感じさせているものが多い。
しかしこのスープは日本人好みの繊細な味と風味だった。
うーん、こういうおいしさの分かる人間が日本人以外にもいたか。
何口か味わっているうちに、ふと気がついた。あれ、この味知ってる?!
…そうか、だからこれほどおいしく感じたのか。
それは、私にとっての三大異味のひとつ、
”とあるチェーン店のラーメン”のスープの味そのものだったのだ。
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;別に店の名前を隠す必要があるわけではないのだが、
 知らない人に言っても分からないだろうし、分かる人にはこれだけで十分なのだ。
 「どうしても気になる」という人は「名古屋のソウルフード」で検索してみてね。

その”とあるチェーン店”は昔も今もスープのレシピを秘密にしているらしい。
ある者はその白いスープの色から「とんこつスープだ」と言う。
しかし風味は明らかに魚介系だ。
が、独特の風味であるためそれ以上詳しい推測はできないでいた。
ところが、このワンタンのスープには”だしがら”が入っていた。
つまりそれこそがこの風味の正体だということになる。
一つ目のだしがらは、にぼし。うん、これは予想通り。
そして二つ目のだしがらは、小さな干し貝柱だった。
ホタテではなく、もっと小さなやつ。イタヤ貝?
海産物の乾物でだしをとることは中華料理では定番で、
実際あちらの中華街でもいろいろな海産物の乾物が売られているのを目にした。
もう間違いないだろう。これは中華料理における定番の味の一つだったのだ。

そうか、これが通称「名古屋のソウルフード」の秘密だったのか。
とはいえ、その”とあるラーメン”のスープが白い理由はいまだ不明のままだ。
そういえば、そのワンタンのスープも灰色に濁っていた。
乾物からだしをとるだけならば、スープはこんなに濁ったりはしない。
そう言われてみると、にぼしと干し貝柱の煮出し汁であれば
”異味”などと言うまでもなく、飲めばすぐに分かるような気もする。
まだ何か秘密があるのだろうか?”異味”の秘密を探る旅はまだまだ続く。