ミャンマー旅行記(2/4) ;意外にも砂漠

ミャンマーでは、5月中基本的に学校が夏休みだという。
なぜなら、ミャンマーでは4月~5月が一年で最も暑いからである。
5月下旬からは雨季となり、午後からは激しいスコールが降って気温が下がる。
そして10月以降は乾季となり、日本の初夏のような過ごしやすい気候になるという。
実のところ、これはタイと同じ気候である。まあ、そりゃそうだ。隣国だし。
だからGWに東南アジアへ行くのは気が引けるのだが、
逆に過ごしやすい乾季に行くと何か物足りない気分になるものなのだ。

ミャンマーでも、東南アジアで目にするような果物は豊富で安い。
市場でよく目にしたのは、パパイヤ、ブドウ、ランブータン、そしてマンゴー。
果物の多くは雨季が旬だということだが、GWの頃にも豊富にあった。
そして、ドリアンもあった。
ドリアンの場合よく目にするわけではないが、
扱う業者は専門に扱っているため店頭に山積みになっている。
ミャンマーではドリアンとマンゴスチン食べ合わせがよいとされており、
 どの店もこれら2種を合わせて売っていた。
一つ700~1,000円程度で、他の果物と比べればかなり高い。
ドリアンはミャンマー国内でも獲れるものの、タイやマレーシアから来るものもあり、
それらの輸入品の方が味の良い高級品とされているようだ。
昨年旅行したシンガポールでは安いところでドリアン一つ1,500円だった(観光客相手の
店ではその倍の値段をつけていた)ことを考えると
ミャンマーのドリアンは安い。見つけたらためらわずに買って食べた。

ヤンゴンの物価は当然日本よりも安く、衣類や食料品で換算すると半分程度。
Tシャツが安いもので一枚200円、缶ジュースは一本60~80円。
ガソリンは~60円/Lだった(;ミャンマーでは石油が少し出るらしい)。
両隣のタイやインドもこれくらいの物価水準なので、それに追従しているのだろう。
なお言うまでもなく、人件費(つまり給料)はこれよりもはるかに安い。
ミャンマーの通貨単位はチャット(表記は「K」;ミャンマーでは“ky”で
「チャ」と発音する)で、ちょうど10K=1円なので分かりやすい。
みやげ物屋で売られているものの多くがタイで目にするものだったことからして、
加工製品の多くはタイからの輸入品なのだろう。
ちなみに、バガンに来る観光客はタイ人が最も多いのだそうだ。

ヤンゴンでのホテルは、日本で旅行代理店にとってもらった。
下層3階分(+地下)がショッピングセンターで、4階よりも上層が客室。
立派な作りで価格も手頃。スタッフも親切で人懐っこかった。
ただし、それでも避けられない問題はある。
ヤンゴンは今急速に発展しているためか、しばしば停電が発生する。
夜に多いのか、ホテルの室内で何度も停電にあった。
停電になると室内の明かりはすべて消え、代わりに非常灯が点灯する。
しかしトイレやシャワールームには非常灯がないため、
停電になると真っ暗になる。これは困る。日本では味わうことのない感覚だ。
一回の停電は数分間、長くても10分程度だが、
電力が復旧するとテレビが再起動し、初期設定の大きな音量で鳴り出すのには困惑した。

一泊しかしなかったが、バガンで宿泊したホテルはさらに素晴らしかった。
いわゆるリゾートホテルで、「リバービューホテル」の名が示す通り
エーヤワディ川を望む川岸に建てられている。
実物の仏塔を取り囲んで広大な庭園が造られており、
その中に建てられたコテージが客室になっていた。正直戸惑うほどの贅沢さ。
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うーん、ここに1週間閉じこもっているだけでもいい。
これでも価格はかなりお手頃で、タイやマレーシアの1/3くらいといったところ。
ベランダからすぐ庭園に出られ、芝生の上を少し歩くと大河を見下ろす崖上に出る。
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近くには下の河原に降りられそうな階段があった。
降りてみると、崖だと思っていたそこは3階建ての客室棟だった。
そうか、こちらがホテル自慢の「リバービュー・プレミアムスイート」か。
コテージの部屋とこちらとではどちらが高いのだろう?
コテージからの眺めもよいが、広い庭園があだとなって河の様子を見ることはできない。

ところが、こんな豪華なホテルにもやはり問題はあった。
翌朝早く、まだ夜が明ける前、薄暗い時間帯に騒音で目が覚めてしまった。
何事かと思いベランダから外に出てみたところ、
何艘かののボートが向こう岸からこちら側めがけて河を渡っていたのだ。
けたたましい爆音を出すアジア仕様のエンジンを備えたボートである。
ホテル近くの川岸に船着き場があるようで、
そこにはこれまたうるさいエンジンむき出しのトラックも集っていた。
うーん、これだと、「リバービュー・プレミアムスイート」のほうが高い
てことはないだろうな。
ちなみにこのホテル、GWだったこともあるのか、
この日の宿泊客の8割方が日本人だった。

その翌日もオプションツアーで、
バガンから南東へ50kmほど行ったところにあるというポッパ山を目指した。
「ポッパ山は“花”の山」
ツアーに同行するガイドさんからそのように聞かされていたが、
自動車で進めば進むほど辺りは荒涼とした様子になり、
気が付くと地面は赤い砂地になっていた。
生えている植物は日本でいう棕櫚の木(ただし高さが10mくらいある)ばかりで、
もはやこれは砂漠と言っていい土地である。
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モンスーンのお膝下である東南アジアに砂漠があるなんて信じられない!
お隣タイではお米が年に2回とれ、
ベトナムではジャングルが米兵たちを苦しめたというのに…。
というか、さっきまでいたホテルはまさに南国の楽園というべき風景だったのに。

確かに、バガンへ来る飛行機から眺めた大地の様子が何だか変だとは思った。
ヤシの木(;実は棕櫚の木)の並木によって土地が区切られてはいるが、
赤く乾いており、耕作されている様子ではない。
おそらくミャンマーでは日本と同じ一毛作で、
この後雨期に入ったら水を引き入れて田植えを行うのだろう
そう思っていた。
が、ガイドさんの話によると、この辺りでは稲作ができないのだという。
並木のように植えられていた棕櫚の木は、
実は樹液を採るために植えられているのだそうだ。
ちなみに採れた樹液は煮詰めて黒砂糖にしたり、発酵させてお酒にしたりする。
生の樹液ジュースを飲ませてもらったが、柿の搾り汁のような味がした。

乾燥地帯をさらに進むと、道端に立っている人がいる。何かの合図を送ってくる。
ガイドさんいわく、
「あの人たちはこの辺りの住民です。ほとんどがお年寄りです。
 この辺りではお米がとれないため住民はみな貧しく、仕事もありません。
 だからああやって、道を往く旅行者に対して物乞いをします。
 でも、車を止めてはいけません。
 一人にお金を渡すと、周りから大勢が駆け寄ってきて大変なことになります。」
午前中とはいえ、熱帯の日差しはきつい。木陰を作るような樹木も多くはない。

バガンをたってから1時間半ほどすると、道が上り坂になった。
それとともに周りに緑が増えてきた。人家が増えて町のような雰囲気になった。
木の枝を覆う桜に似たピンク色の花々、黄色い藤のような花、赤い羽毛のような花。
気が付くと、道の周りがきれいな花であふれている。
「ポッパ山は“花”の山」
車がポッパ山に近づいていることを、車内の誰もが感じ取っていた。

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