ドリアンの匂い

先日、朝日新聞の何かの記事が別の記事の盗用だった、というニュースがあった。
大手の全国版新聞に限っても、この手のニュースが年に1,2回は流れてくる気がする。
ブログなんかを書く一般人は大抵自己顕示欲に基づいて文章を書くわけで、
なにも他人の文章を盗用してまで…というのが私の正直な気持ちなのだが、
仕事で文章を書く身にとってはまた話が別なのだろう。
(でも、会社の報告書や資料なんかはやっぱり意地でも自分で書くぞ、私の場合)
 
中国ではいざ知らず、日本ではこのような盗用は非常な悪事とされる。
この盗用が発覚した朝日新聞の記者も、きっと重い罰を与えられたことだろう。
悪事とは、被害者と加害者があってはじめて成立する。
この場合の加害者は盗用を行った記者であるが、被害者は記事を盗用された側の記者である。
競合する同業者同士の間で被害/加害の関係が成立するため、
新聞やテレビなどのマスメディアはこの手のニュースを大々的に取り扱っているようにも見える。
 
しかし、読者や視聴者もまたこの手の事件の被害者であるという点を私達は見落としてはならない。
盗用により作成された記事は筆者のおざなりな気持ちで作成されたことが明らかであり、
その内容の信憑性が筆者によって確認されていないからである。
盗用された側の記者がしっかりした記事を書いていればそれはそれでいいのだが、
そうでなかった場合、読者は誤った内容の記事を信じて踊らされることにもなり兼ねない。
このような問題についてよく
「一般人が編集可能なウィキペディアの記事の流用は好ましくない」
と言われるが、それを言うならサイバースペース(よのなか)のHPの大半についても同様である。
実際私は以前、二酸化炭素地球温暖化原因説に反対する趣旨のHPに
悪意に基づいて作られたとしか解釈できないでたらめなデータが掲載されており、
それを真に受けた人が二酸化炭素冤罪説を信じていた、という例に接したことがある。
 
少し前、テレビで
「南国フルーツのドリアンは臭い。だからホテルなどへの持ち込みは禁止されている」
という話をやっていた。私はこの夏にも1週間ほどタイに遊びに行ってきたが、
ドリアンの持ち込みを禁止しているホテルが多いのは事実である。
が、その前半部分、「ドリアンは臭い」という主張はどうなのか?
実は私はドリアンが大好きで、南国へ行った際にはよく食べる。
ドリアンは言葉で表現できないくらいおいしく、さらに私は新鮮なドリアンを臭いと感じたことがない。
確かに切り出されてから時間がたつと少し異臭を感じるようになるが、臭いというほどではない。
しかし、知る人ぞ知るタイみやげの「ドリアン羊羹」は私もウ○コ臭くて食べられないので、
私だけがドリアン臭に対して鈍感だというわけではないと信じている。
実際、ドリアンの持ち込みを禁じているタイのホテルでも、
ドリアンをかばんの中に入れて外から見えない状態にしていれば、
入り口のホテルマンや中のスタッフに(においで)気づかれることはない。
 
マスメディアで「ドリアンは臭い」と言い放つ制作者は、実際にドリアンを食べたことがあるのだろうか?
もしないのだとしたら、それは記事の盗用と同じくらいの悪事だ、と私は思う。
ただしこの場合被害者は視聴者の側だけだという違いはあるが。
もし食べたことがあり、実際のドリアンはそれほど臭くないと感じていたとすれば、
それは記事の盗用を上回る悪事、ではないだろうか?
 
この前代々木公園で開催されていたベトナム・フェスティバルでドリアンの切り身を食べたところ、
今までに食べた中で最高といっていいくらいおいしかった。
先述の通りそのおいしさをうまく言葉にできないのが悔しいが、
「芳醇」という言葉はこの味のためにあるのではないかと思う。
次はGWに代々木公園で開催されるタイ・フェスティバルでドリアンが食べられる。
「ドリアンは臭い」と主張する、あるいは信じている人は、
ぜひとも一度自分自身でドリアンを食べてみてくださいませ。
目の前でちゃんととげとげの皮を切り開いている店のドリアンがお薦めです。