ベトナム中部旅行記(3/7) ;ホテル・カナリー

(前回からの続き)
そう考えてスタイルのいい一人の女性に尋ねてみた。
ベトナム人もダイエットをするの?今は世界中の人間が体重を気にしてるんだけど」
「?(通じていないっぽい)」
「『ダイエット』は、スポーツをしたり走ったり、食べ物を少ししか食べないこと」
「(あまりピンときていない様子で)そんなことはしません」
これではっきりした。要するに、ベトナム人は「太らない遺伝子」を持っているのである。
男性の場合は歳をとっても基礎代謝量が衰えず、
女性の場合は脂肪が適量胸のみに蓄積される。そういう風にできているとしか思えない。
別の女性はこう言っていた。
「日本人女性はきれいですね。色が白くて」
「私達は日に焼けること、紫外線をひどく恐れるあまり、
 いくら暑くても女性は外出するとき大抵長袖の服を2枚重ね着します」
「私達も日本の化粧品を使いたい。『シセイドー』はみんな知っているけど、
 高すぎて誰も買えない。」
 
私がこれほど詳しい話を聞けた女性達、それは、
私がフエで1週間滞在したホテルのスタッフ達である。
フロントで受付嬢をしているラン姉さんには適切な情報を教えてもらい、
ホイアンへ遠出をする朝は速く駅まで行かなければならないということで
てきぱきとバイク・タクシーの手配をしてくれた。
『アネゴ』とあだ名をつけ、「聡明(トンミン)」で「気が強い(マインメー)」
という意味だと教えたところ、「気が強い」というところで嫌な顔をされたので、
それ以降は「トンミンさん」と呼んでいた。
お礼にホイアンで何かお土産を買っていこうと思い立ち、
手縫いの刺繍のハンカチ(バラの模様)を1枚買って帰った。
(余談だが、ベトナムでは手縫いの刺繍が驚くほど安い。)
ホテルに戻って「とても感謝しています。あなたへのプレゼントです」と手渡した。
しっかり者の『アネゴ』なので受け取らないかと心配したが、
「私へのプレゼントなの?うれしい」といってとても喜んでもらえた。
 
…が、そこで気がついた。今の受付嬢は「トンミンさん」じゃない!
それがもう一人の受付嬢のミンちゃんである。すごい小顔美人。
いや、本当はフロントで話しかけたときから気付いてはいたのだが、
タイミング的に引くに引けなかった、というほうが正しい。
それにしてもミンちゃん、あまり心当たりのないプレゼントをもらって
軽々しく「うれしい」と受け取ってしまってもいいのか?
はい、ベトナムでは、人付き合いにおいてそれほど難しく考えなくてもいいらしい。
後で聞いたところでは、ミンちゃんは他のスタッフにプレゼントを見せびらかして
私の噂話に花を咲かせていたらしい。
ちなみに、「トンミンさん」にはその後もいろいろとお世話になったので、
別のプレゼントを渡す機会はいくらでもあった。
フエ市内のデパートで買った刺繍入り(ただしミシン縫い)の小物入れを
改めてプレゼントした。
 
ホテルの最上階である7Fはフロア全体が食堂になっており、そこで朝食を食べた。
7Fは他の階よりも小さく、食堂といっても小さなレストラン程度のものである。
朝食を食べている客は多くてせいぜい2~3人、大抵は私一人だった。
そこでもう一人、ウェイトレスのフォンちゃんと親しくなった。
どうせ他に客がいないので、話しかけるとそれに応じて会話をしてくれた。
今23歳で、夜は英語の専門学校みたいなところに通っているとのこと。
といっても私と同程度の英語力なので、滑らかな会話を交わすのは無理。
もっぱら「指差し本」に頼る会話である。
7Fの窓から街の景色を見て、デジカメのズーム機能でおいしいレストランの場所を
教えてもらったりもした。
「いつも僕しか客がいないけど、ホテルは大丈夫なの?」
「いえ、夏のハイシーズンだといつもグループ客が2~3組入っていて
 とても忙しいです。今は客が少ない時期。もうすぐ雨季になります。」
午後からは別の仕事を掛け持ちしているそうで、恋人を作る暇もないほど忙しい
と言っていた。彼女には幸せになって欲しいと思った。
 
これまで何度も海外旅行をしてきているが、ガイド以外の現地人と
(人から紹介された場合を除いて)これほど親しくなれたことはなかった。
実は今回長期旅行をするに当たって「現地人と親しくなる」という目標を定めており、
それが実現しやすそうだという点も今回ベトナムの地を選んだ要因の一つである。
正直ベトナム人がこれほど人懐っこくて親しくなりやすいとは思っていなかったが、
今回ベトナムの地を選んだのは大正解であった。
しかしそれだけでなく、本当に良かったのは「ホテルが忙しくない時期」、
それにもちろんいいスタッフ揃いのホテルを当てた私の引きの強さだったのかもしれない。
これから年末にかけてベトナムは雨季で、観光客は多くないだろう。
現地人と親しくなりたい旅人よ、特にこれからの時期、
ベトナム・フエのホテル<Canary>はオススメです。