韓国の野望・前編(2019/11/23)

 正直韓国ネタで文章を書くなんて無粋な気がするし、ありきたりで新鮮味のないことしか書けないのでこれまでもスルーしてきたが、今年に入ってからの盛り上がり方はこれまでとは少し違う。考察のし甲斐、文章に記しておく価値があるように思われる。ということで、一つ文章を書いておこうと思う。ただし個人的な考察だけであり、資料の調査とか学術的な価値のあるにするつもりはないのであしからず。
 
 韓国における反日は近年に始まったことではなく、少なくともソウルオリンピックが開催されていたころ(1988年)から普通にあった。確かに当時から日本のマスコミは韓国に対して忖度する傾向はあったが、今ほど異常であからさまなものではなかった。なので、ネットがなくても注意してマスコミのニュースや報道を見ていれば韓国における反日活動の実態を知ることはできた。その実態というのは、少数の金目当ての過激な中心核とそれを取り巻いて「恨(ハン)」に酔いたい反日を趣味とする人々、さらにその感情を自身の支持に取り付けたい政治家たちによる飽くなき活動であり、それは今でもそれほど変わっていない。当時から韓国の実態を知る者からすれば「ありきたりで新鮮味のないこと」である。状況が変わり出したのは、2017年に文大統領が政治の表舞台に出てきてからである。
 
 一般的な見方では、それまでの朴クネ前大統領よりさらに反日色の強い大統領に代わった、くらいの認識だった。ネット上では「従北派」としてその“活躍”を期待する向きもあったが、あくまでも無責任な期待でしかなかったはずだ。それこそネット上ではいろいろと期待されていた平昌オリンピックが無事に終わり、私も上記の一般的な見方が現実的だろうと見ていた。国内のマスコミはモリカケ論争に明け暮れ、朝鮮半島では2018年6月に実現した米朝首脳会談とそれに先立つ北朝鮮関連の話題が世界の注目を集めた。少なくとも国内では、文大統領の動きはそれらのニュースの脇に追いやられてあまり注目されなかった。それが同じ2018年の後半に徴用工訴訟の最高裁判決(10月)、自衛隊偵察機へのレーダー照射(12月)と現在まで尾を引く重大事件が発生し、それらの仕掛人もしくは責任者として文大統領の人物像が鮮明に認識されるようになった。とはいうものの、それらについても一般的な認識ではまだ反日政治の一環だとみなされていた。「自衛隊偵察機へのレーダー照射は韓国海軍が隠れて行っていた北朝鮮船舶への“瀬取り”行為を隠すためだった」などと言えば、周囲から信用できない陰謀論者だとみなされてしまっただろう。
 
 2019年に入ると2月と6月の2回にわたって米朝首脳会議が実現したものの何の成果も上がらず、国内では皇室関連のニュースによって韓国と文大統領の影は薄くなっていたが、7月に発生した「ホワイト国除外措置」によって韓国ネタが再び日本のニュースの主役となった。韓国政府と文大統領はこの措置を「自由貿易主義に反する輸出規制だ」として強硬に非難を続け、現在に至っている。韓国国民となぜか日本のマスコミもそれに歩調を合わせ、日本政府の「輸出管理」という言葉ではなく韓国側の「輸出規制」という言葉を使い続けている。これは現在の日本のマスコミの偏った姿勢を示す最も明確な事例の一つだと思うのだが、ここに至って逆に韓国への忖度を取りやめ、韓国側のやり方を非難するマスコミも一部に出てきたようである(平日お昼のワイドショー番組など)。
 
 そして、おそらくは嫌韓勢が最も盛り上がったであろう、8月末のGSOMIA破棄通告へとつながる。一応説明しておくと、GSOMIAとは「軍事情報に関する包括的保全協定(General Security of Military Information Agreement)」の略語で、ここでは特に日本と韓国の間で結ばれた協定のことを指す。軍事に関する秘密情報をやり取りする場合、それを勝手に他国に教えることを禁ずる取り決めである。日韓の間のGSOMIAに実際上の効果はあまりなく、日本と韓国が“味方同士”の関係にあることを互いに確認するための象徴的な意義のために結ばれているとされる。ちなみに一応の確認であるが、日本と韓国の間に同盟関係は存在していない。両国ともアメリカと同盟関係にあるが、「同盟国の同盟国」は同盟国としては扱われない。したがってGSOMIAが破棄された場合、両国は敵国同士になり得るということである。
 
 この点を正しく認識している嫌韓勢は、韓国側からその破棄を通達してきたとき「これで晴れて敵国として扱えるようになる」として大いに盛り上がった。一方の韓国側もこの点を正しく認識していたのかどうか、朴クネ前大統領の時代にこれが結ばれるときには大々的な反対運動が展開されていたという。もう一つの重要な側面は、このGSOMIAに対して日本政府はそれほど積極的な態度を持っておらず、アメリカ政府が重大で積極的な態度を持つものだということである。したがって先の話を少し補足すると、嫌韓勢の盛り上がりは「これで晴れて韓国が“日米の”敵国として扱われるようになる」という期待によるものだったのである。
 
 ここに至って私はようやく一つの合理的な解釈を得ることができた。文大統領の狙いはただの反日ではなく、実のところ南北朝鮮の統一だったのだ。それを阻むものは何かと考えたとき、北朝鮮を敵視しているとみなされている日本との関係、およびアメリカとの同盟関係が壁となって統一を阻んでいたのである。したがって彼がすべきことは、日本との関係を破たんさせ、さらにアメリカとの同盟関係を破棄すること、となる。そして重要な点は、国民の支持を失わずにそれを成し遂げなければならないことである。その先にはもう一枚、南北両国の軍部という壁が残されているが、これは国民の支持があれば突破できる壁である。統一さえ成し遂げられればおそらく自分の役割は終わり、あとは統一国家の国民がどうするかを決めればよい。これが文大統領の野望であると私は考える。
 
 彼は大統領への就任以前から日本とのGSOMIA破棄を公約に掲げており、おそらくこれまでの流れは彼の描いていた筋道の通りの展開だったのだろう。日本によるホワイト国除外措置は予想していなかっただろうが、それを反日の燃料に利用すれば国民の反発を小さく抑えつつGSOMIA破棄を実現できる、という読みはあったと思う。これぞまさに真の意味での“用日”である。とはいえ利用された日本側が愚かだったとは言えない。もしホワイト国除外措置が起こらなかった場合には、レーダー照射に絡む日本の偵察機の接近を韓国への敵対行為として国内に宣伝し続け、反日感情によってGSOMIA破棄への反発を抑えるつもりだっただろうから。それでも十分な効果があると思われ、どのみち日本に彼の野望を止める手立てはなかったのである。
 
 では、日本政府がGSOMIA破棄を回避すべきと考えた理由は何だろう。本来であれば8月末に破棄は決定されたのであり、その後にそれを取り消すことはできない。にもかかわらず「11/22までは待ってもいいから取り消して」と回答したのは、明らかに日本側の“譲歩”である。それゆえの「ボールは韓国側にある」だった。その背後には当然アメリカの意向もあったと推測されるが、それが完全に意に反する譲歩だったというわけでもなさそうだ。とはいえやはり積極的な姿勢とまでは言えず、韓国側の決意が固ければやむを得ず、という姿勢であることは読み取れた。以上から推測されるのは、日本政府は依然として韓国を大陸の共産主義勢力(ロシア政府と中国共産党)からの軍事的防波堤とみなしており、それを日本における韓国の必要性だと考えているだろうことである。
 
 とは言え今さらロシア政府と中国共産党を“共産主義勢力”と一括りに考えるのには無理があるし、また韓国が日本の期待通りに防波堤として機能してくれる保証もない。反日を絶対的な国是と考えている今の韓国であれば、日本への軍事侵攻をたくらむ勢力に喜んで助力する事態を想定しなければならないだろう。それゆえの消極的な態度だと私は推測する。けれども、もしも私が日本の戦略決定の立場にあれば、やはり韓国を“潜在的な味方”と想定し、北朝鮮という独裁主義勢力(の象徴)に対抗する自由主義勢力の一員として将来の日本に引き渡すよう努めるだろう。これが正道の安全保障戦略であり、大国たる日本がとるべき戦略であると考える。これはまた小国である分断された南北両国家の分裂状態を利用しようという策であり、文大統領の抱く野望に真っ向から反するものである。客観的な立場から見て、私は文大統領が日本で言われているほど愚かで無能だとは考えていない。(後編に続く)